Shocking ☆ LOVE 1話目

「衝撃のバレンタイン」

「明後日は、バレンタインだ!というわけで、チョコ買いに行くの付き合って♪」
休みの日に突然家にやってきて、そんな無茶苦茶なことを、男の俺に言うのは、幼馴染みの鈴だ。
完全に、名前負けのこいつは、可愛さの欠片もない…。
男以上にサバサバしているし、結構乱暴・強引。
付き合わされる俺の身にもなれっての。
「誰がそんなもんに付き合うか。」
かといって、早々大人しく付いていくほど、俺はなよっちくない。
「なんだとー、冷たいやつめ!」
「お前の言ってることが、無茶苦茶なんだよ!」
こんな口げんかもしょっちゅうだ。
「ひどいひどい…かわいいゆぅちゃんはどこへ??」
俺の部屋の入り口で、めそめそと泣き崩れる。
もちろん、嘘泣きだ。
「懐かしい呼び名を出すな。今更、そんな呼び方をするな。」
「いーじゃないのよ〜。昔は、すーちゃんすーちゃんって、懐いてたくせに。」
懐いてたって…俺ら同い年なんですけど?
「つーか、友達誘えばいいじゃねぇか。」
「だめっ!あんたじゃなきゃダメなの!」
「なんで?」
「なんでって…そりゃぁ…。」
珍しく、口ごもる鈴。しかも、妙に恥ずかしそうにしている。
「ははぁ〜、さてはお前、マジで好きな奴にあげる気だな?」
「悪いかっ!女の子じゃ、趣味わかんないんじゃんっ。やっぱここは、同じおと…」
「却下。」
鈴が言い終わる前に、さっさと結論を出す。いつまでも、付き合ってられるか。
俺は、ベッドにごろりと寝転がる。
「ケチ〜。じゃ、ちゅーしたら一緒に来てくれる?」
そう言いながら、鈴は俺に近寄ってくる。
やばい…目が本気だ。
「待て。待て待て待て。わかった、いく、行くから。」
「やったぁ〜!じゃ、さっさと支度してね。」
うきうきと、部屋を出て行く鈴。
なんで、それくらいで引き下がるかって?
そりゃ、今マジでキスなんかされた日にゃ、一生そのネタで脅される…。
鈴は、そういうやつだ。もう少し、可愛げがあればいいのになぁ。
「お待たせ。」
「遅いっ!」
まだ、5分もたってねぇよ。
文句言いつつ、なんだかんだ付き合う俺も俺だよな。
鈴に引きずられ、近くの大型店のバレンタインコーナーへ行く。
「なんかさぁ、こうやってると、カップルみたいだよねぇ。」
「迷惑な話だな。」
「ひっど。いーじゃないのよ、こぉんな可愛い子が彼女なんてっ。」
「自分で可愛い言う奴が、あるか。」
「冷たいなぁ。だから、モテないんだよ。」
「余計なお世話だよ。」
まぁ、確かに彼女いない暦着実に更新してるけど・・・。
お前、見てると怖くなるんだよ…とは、とても言えない。
女ってのは、腹になんか抱えてんじゃないかと、鈴を見てるとそう思う。
鈴は、誰にでもサバサバと付き合うが、俺以外の男子には、愛想がいい。
だが、実際どうだ?いつもあんな調子だ。
「ねぇ〜、どれがいっかなぁ?」
「好きにしろー。」
付き合ってられるか。一緒に来ただけでも、ありがたく思え。
「あ、いいこと思いついた!」
「な、なに?」
嫌な予感。何を言い出す気だ?こいつは。
「ねぇ、交換しようよ。」
「は?何を?」
「バレンタインチョコ。せっかく来たんだし、お互いに買い合うってのどーよ。」
鈴は、いかにも楽しいと言わんばかりに、ニコニコしている。
「お前なぁ。また、突拍子もないことを。」
「毎年あげてるじゃん。義理。」
「何故、俺が、バレンタインにお前にやらないかん。」
「祐樹、いっつもホワイトデー忘れるじゃん。で、その辺にあった飴1個とかじゃん。」
たまには、まともに返しなさいよと、鈴は勝ち誇ったように言う。
ちなみに、祐樹ってのは、俺の名前だ。当たり前だけど。
「や、だってさ、義理だろ?いーじゃん。別に。」
「却下〜。今回ばかりは、祐樹に拒否権はない。」
まぁ、確かに忘れる俺が悪いのかもしれんが…。
「というわけで、20分後に外でね。」
言いたいことだけ言って、鈴はさっさと去っていく。
「あ、おい!こら待て!」
呼び止めるのも空しく、鈴は人ごみに消えた。
ていうか、こんなところで一人にしないでくれ…。
「はぁ。。」
買うしかないんだろうなぁ、この展開は。
ま、なんでもいっか。買えばいいんだし。安いのにしとこう、うん。
20分もかけずに、俺はさっさと売り場を後にした。
外で、鈴が出てくるのを待つ。20分を過ぎたあたりで、鈴がやってきた。
「お、早いねぇ。祐樹。」
「てめぇ、あんなとこで一人にしやがって。」
「社会勉強だと思って。チョコ買った〜?」
「買ったよ。」
「よしよし。じゃ、公園行こう。」
「なぜ、公園?」
「カップルになったつもりで。」
マジで勘弁してくれ…。学校の奴らに見つかったら、確実に冷やかされるぞ。
鈴に強引に連れて行かれ、公園のベンチに二人並んで座る。
「んーっと、じゃ、はい。コレ。」
鈴に、包みを渡される。
「ほら。」
俺も、自分が買ったやつを渡す。が、鈴に押し返された。
「それを渡すにあたって、条件があります。」
「は?」
鈴は、立ち上がると、俺の目の前に立った。
何度か、大きく深呼吸している。ついでに、気合を入れなおしている。
何がしたいんだ?
「それっ!そのチョコ、本命だからね!」
「はっ?」
ちょ、おい、待て待て待て。今、何て言った?
「だからっ、ソレは、返事と一緒に頂戴っ!」
言いたいことだけ言って、鈴は走って行ってしまった。
俺の手には、鈴に貰ったやつと、鈴にあげる予定だっだものがある。
公園に一人ぽつんと残され、俺は、鈴の言葉を反芻する。
本命…?これが?てことは・・・?
「好きな奴って…俺?」
その後、ふらふらと家に帰ってきた俺は、おばさん——鈴の母親から、貰ったチョコが手作りだと聞かされた。

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